リスクオン・リスクオフとは?意味・違い・市場への影響を徹底解説【日本の株・為替】

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リスクオン・リスクオフとは?意味・違い・市場への影響を徹底解説【日本の株・為替】

株式投資や為替取引に関するニュースを見ていると、「市場はリスクオンムードに傾いた」「地政学リスクの高まりからリスクオフの流れへ」といった解説をよく耳にします。リスクオン」「リスクオフ」とは、一体どのような状態を指すのでしょうか その意味や違い、そして日本の株価や為替相場にどのような影響を与えるのか、ニュースを聞いていてもよくわかりませんよね?

この記事ではわかりやすくお伝えしていきます!

リスクオンリスクオフは、市場全体の雰囲気や投資家の心理状態を示す重要なキーワードであり、これを理解することは、相場の流れを読み解き、適切な投資判断を行う上で非常に役立ちます。

この記事では、「リスクオン」と「リスクオフ」それぞれの基本的な意味から、どのような状況で発生し、どんな資産が買われやすい(売られやすい)のか、両者が切り替わる要因、日本市場への具体的な影響、そして投資家としてどのように向き合うべきかまで、徹底的に解説していきます。「リスクオン・リスクオフ」の意味を深く理解し、市場のセンチメントを読む力を養いましょう。

リスクオンとは?投資用語の徹底解説

「リスクオン」「リスクオフ」の基本的な意味

まず、「リスクオン」と「リスクオフ」という言葉の基本的な意味を理解しましょう。これらは、市場に参加している投資家全体の、リスクに対する姿勢や心理状態を表す言葉です。

  • リスクオン (Risk On)

    これは、投資家がリスクを取ることに前向き(積極的)になっている状態を指します。市場参加者の間に楽観的な見方が広がり、「より高いリターンを求めて、ある程度のリスクを取っても積極的に投資しよう」という意欲が高まっている市場心理や状況を表します。この局面では、一般的にリスクが高いとされる資産(株式など)に資金が向かいやすくなります。


  • リスクオフ (Risk Off)

    これは、投資家がリスクを避けることに慎重になっている状態を指します。市場参加者の間に悲観的な見方や将来への不確実性が高まり、「損失を回避するために、リスクのある投資は控えよう」という心理が働いている市場心理や状況を表します。この局面では、投資家はリスクの高い資産を売却し、相対的に安全と考えられる資産(国債や金など)へ資金を退避させる傾向が強まります。


これらは、市場全体の「ムード」や「地合い」「センチメント」を示す言葉であり、明確な定義があるわけではありませんが、投資家の行動パターンを示す上で広く使われる概念です。

なぜリスクオン/リスクオフが起こるのか? ~投資家心理の波~

市場のムードが「リスクオン」と「リスクオフ」の間で揺れ動くのはなぜでしょうか? その根底にあるのは、市場に参加する多数の投資家の集合的な心理の波です。人間の心理には、「期待」と「恐怖」という相反する感情があり、これが市場の動きに大きく影響します。

株は期待で買われ、恐怖で売られるのです

リスクオンを後押しする要因
  • 景気拡大への期待: 経済指標が好調で、今後の景気拡大が見込まれる状況。
  • 企業業績への楽観: 企業の収益が増加し、今後の業績見通しも明るい状況。
  • 金融緩和: 中央銀行が利下げや量的緩和などを行い、市場に資金が供給され、低金利環境が続く状況。
  • 地政学リスクの緩和: 国際的な緊張が和らぎ、平和的なムードが広がる状況。
  • ポジティブな政策期待: 減税や規制緩和など、経済成長を促す政策への期待感。
リスクオフを後押しする要因
  • 景気後退(リセッション)懸念: 経済指標が悪化し、将来の景気後退が意識される状況。
  • 金融システム不安: 大手金融機関の破綻懸念や信用収縮など、金融システム全体への不安が高まる状況(例:リーマンショック)。
  • 金融引き締め: 中央銀行がインフレ抑制のために利上げなどを行い、市場から資金が吸収される、あるいは金利上昇が見込まれる状況。
  • 地政学リスクの高まり: 戦争、紛争、テロ、大国間の対立激化など、国際情勢が緊迫化する状況。
  • 政策の不透明感: 選挙結果が予想外だったり、重要な政策の行方が不透明だったりする状況(例:トランプ関税の発動懸念など)。
  • 自然災害・パンデミック: 経済活動に甚大な被害をもたらすような大規模災害や感染症の拡大。

これらの様々な要因が、投資家の心理に影響を与え、それが市場全体の「リスクオン」または「リスクオフ」というムードを形成し、具体的な資金の流れとなって現れるのです。

リスクオン/リスクオフとはどういう状況なの?

では、リスクオン局面とリスクオフ局面では、具体的にどのような市場状況となり、どのような資産が買われやすく(売られやすく)なるのでしょうか?

リスクオン局面の特徴と買われやすい資産

市場の雰囲気: 楽観的で強気なムードが支配します。投資家は積極的にリスクを取り、リターンを追求しようとします。株価は上昇基調となり、企業の好決算や良好な経済指標が好感されやすい状況です。市場のボラティリティ(価格変動率)は比較的低くなる傾向があります。

買われやすい(価格が上昇しやすい)資産
一般的に、高いリターンが期待できるものの、相対的にリスクも高いとされる資産に資金が流入します。

  • 株式: 特に、景気拡大の恩恵を受けやすい景気敏感株(素材、資本財、自動車など)、将来の高い成長が期待されるハイテク株(グロース株)、時価総額の小さい中小型株などが買われやすくなります市場全体(株価指数)も上昇する傾向があります。
  • 新興国通貨・株式: 先進国よりも高い経済成長が期待される一方、政治・経済的なリスクも高い新興国の通貨や株式は、リスクオン局面で魅力的な投資先と見なされ、資金が流入しやすくなります。
  • 高金利通貨(資源国通貨など): 世界経済の拡大期待から資源価格が上昇しやすいことや、金利差を狙ったキャリートレードなどにより、オーストラリアドル、カナダドル、ニュージーランドドルといった資源国通貨や高金利通貨が買われやすくなります。
  • コモディティ(商品): 原油や銅、鉄鉱石などの産業用コモディティは、世界的な景気拡大による需要増加期待から価格が上昇しやすくなります。
  • 社債(特にハイイールド債): 企業の信用リスクに対する懸念が後退するため、国債よりも利回りが高い社債、特に信用格付けが低い代わりに高い利回りを提供するハイイールド債(ジャンク債)なども買われやすくなります

リスクオフ局面の特徴と買われやすい資産

市場の雰囲気: 悲観的で弱気、あるいは先行き不透明感が強いムードとなります。投資家は損失を回避することを優先し、リスクの高い投資には慎重になります。株価は下落基調となり、悪材料に敏感に反応しやすくなります。市場のボラティリティ(価格変動率)は高まる傾向があります。

買われやすい(価格が上昇しやすい)/売られにくい資産 (安全資産への逃避):
投資家はリスクの高い資産を売却し、相対的に安全と考えられている資産へ資金を移動させます。

  • 主要国の国債: 信用力が非常に高いとされる先進国の国債、特に米国債、ドイツ国債、日本国債などは、代表的な安全資産として買われ、価格が上昇(利回りは低下)しやすくなります。特に日本国債などは買われやすい資産として有名です。
  • 金 (ゴールド): 「有事の金」という言葉があるように、経済危機や地政学リスクが高まる局面で、価値の保存手段として買われやすい代表的な安全資産です。特定の国や企業の信用リスクの影響を受けにくいとされています。
  • 円 (JPY): 日本が世界最大の対外純資産国であることなどから、国際金融市場では伝統的にリスクオフ局面で買われやすい「安全通貨」と見なされてきました(ただし、近年その性質に変化が見られるとの指摘もあります)。
  • 米ドル (USD): 世界の基軸通貨であり、圧倒的な流動性を持つことから、特に金融危機など市場の混乱が極度に高まった局面では、最終的な資金の逃避先として米ドルが買われることもあります(「ドルへの逃避」)。ただし、リスクオフの原因が米国内にある場合などは、必ずしもドルが買われるとは限りません。
  • ディフェンシブ銘柄 株式市場全体が下落する中でも、生活必需品、ヘルスケア、公共事業、通信といった、景気変動の影響を受けにくいとされるセクター(ディフェンシブ・セクター)の株は、比較的下落率が小さかったり、資金の逃避先として買われたりすることがあります。

リスクオン/リスクオフが切り替わる要因

市場のムードは、様々なきっかけでリスクオンからリスクオフへ、あるいはその逆へと転換します。主な要因としては以下のようなものが考えられます。

  • 経済指標のサプライズ: 予想外に強い/弱い経済指標。
  • 金融政策の転換・示唆: 予想外の利上げ/利下げ、タカ派/ハト派発言など。
  • 企業決算の動向: 主要企業の決算内容や業績見通しが、市場全体の期待感を左右する。
  • 地政学リスクの変化: 戦争・紛争の勃発・激化・停戦、テロ事件、大国間の関係悪化・改善など。
  • 政治イベント・政策変更: 重要な選挙の結果、政権交代、大型の経済対策や規制変更の発表・頓挫など。
  • 自然災害・パンデミック: 経済活動やサプライチェーンに大きな影響を与える事象の発生・収束。
  • 市場のショックイベント: 特定の資産価格の急落、大手金融機関の経営不安などが連鎖反応を引き起こす。
  • (2025年4月現在は)トランプ政権の政策: 特に保護主義的な通商政策(トランプ関税)の発動や、その可能性が高まることは、世界的な貿易戦争や景気後退への懸念を強め、典型的なリスクオフ要因となり得ます。政策の予測困難性そのものが不確実性を生み、市場を不安定にさせる要因ともなります。

これらの要因が複合的に作用し、市場参加者の心理が変化することで、リスクオンとリスクオフの局面は切り替わっていきます

リスクオン/リスクオフのときはどうしたらいい?

市場のムードがリスクオンやリスクオフに傾いている時、投資家はどのように考え、行動すればよいのでしょうか。特に日本の市場への影響と、一般的な投資戦略について解説します。

日本市場への影響 ~リスクオフで円高・株安?~

世界的な市場のムードは、日本の株式市場や為替市場にも大きな影響を与えます。

  • 典型的なパターン(特にリスクオフ時):

    過去の経験則では、世界的にリスクオフムードが強まると、海外投資家などがリスクの高い資産(例:新興国株や日本株の一部)を売却し、相対的に安全と見なされる円を買い求める動きが活発化する傾向がありました。


    その結果、「円高」と「株安」が同時に進行するというのが、リスクオフ局面における日本市場の典型的な反応パターンでした。これは、輸出企業の収益を圧迫するため、日本経済にとっては特に厳しい状況となりやすいです。


  • リスクオン局面では逆の動き:

    逆に、世界的にリスクオンムードが高まると、投資家はより高いリターンを求めてリスク資産に資金を振り向けます。海外投資家などが日本株を買い、同時に円を売って他の高金利通貨や新興国通貨などに投資する動きが出やすいため、「円安」と「株高」が連動しやすい傾向があります。


  • 近年の変化と注意点:

    ただし、近年はこの「リスクオフ=円高」という伝統的な構図が必ずしも当てはまらない場面も見られます。日本の長引く低金利や貿易赤字の定着、あるいはリスクオフの原因によっては、円が他の安全通貨(米ドルやスイスフラン)ほど買われない、あるいは他の通貨と一緒に売られるケースも出てきています。


    そのため、過去のパターンを鵜呑みにせず、その時々の状況(金利差、貿易動向、リスクオフの原因など)を考慮して判断する必要があります。


いずれにせよ、グローバルなリスクオン/リスクオフの流れは、日本の株価や為替を動かす重要な要因の一つであることは間違いありません。

投資戦略への活かし方

市場のリスクオン/リスクオフの状況を、自身の投資戦略にどのように活かすことができるでしょうか。

  1. 市場の「温度感」を把握するバロメーターとして: 現在の市場が楽観的なのか、悲観的なのか、その「温度感」を把握するための重要な指標となります。市場全体のムードを知ることで、自分の現在のポジションや今後の戦略が、市場の流れに合っているか、あるいは逆行しているかを客観的に認識できます。
  2. ポートフォリオのリバランスの判断材料に: 自身のリスク許容度に応じて、保有資産の配分(アセットアロケーション)を見直す(リバランスする)際の判断材料とすることができます。例えば、リスクオフが強まりそうだと判断した場合、株式などのリスク資産の比率を一時的に下げ、国債や現金などの安全資産の比率を高める、といった対応が考えられます。逆に、リスクオンへの転換点と判断すれば、リスク資産の比率を高めることを検討します。
  3. 逆張り戦略のタイミングを探る参考に: 市場心理が極端なリスクオン(過熱感、楽観一色)や、極端なリスクオフ(総悲観、パニック売り)に振れた場合は、しばしば相場の転換点が近いことを示唆する逆張りのチャンスとなる可能性があります。「恐怖で買い、熱狂で売る」という格言もあります。ただし、トレンドに逆らうのは非常に難しく、相場の底や天井を正確に当てることは困難であるため、慎重な判断と十分なリスク管理が必要です。
  4. セクターローテーション戦略の活用: リスクオン局面で買われやすいセクター(景気敏感株、グロース株など)と、リスクオフ局面で比較的強い(あるいは資金の逃避先となる)セクター(ディフェンシブ株など)を意識し、市場のムードに合わせて投資対象とするセクターを入れ替える「セクターローテーション」戦略の参考にすることもできます。

投資家としての心構えと注意点

リスクオン/リスクオフという市場のムードを理解することは重要ですが、それ以上に大切なのは、その雰囲気に流されずに冷静な判断を保つことです。

  1. 市場のムードに流されすぎない: 最も重要なのは、市場全体の楽観や悲観といった雰囲気に過度に影響され、感情的な売買(例:周りが買っているから焦って買う「高値掴み」、周りが売っているから怖くなって売る「狼狽売り」)を行わないことです。
  2. 長期的な視点を持つ: 短期的な市場のリスクオン/リスクオフの波に一喜一憂せず、ご自身の投資目標や投資期間に基づいた長期的な視点を維持することが、資産形成においては特に重要です。
  3. 分散投資の徹底: どのような市場局面にも完全に対応できる予測は不可能です。リスクオンで強い資産、リスクオフで強い資産など、値動きの異なる様々な資産クラスや地域に分散投資しておくことが、ポートフォリオ全体のリスクを管理する上での基本となります。
  4. 背景要因の冷静な分析: なぜ今リスクオンなのか、リスクオフなのか、その背景にある具体的な要因(経済指標、金融政策、地政学リスクなど)を冷静に分析し、その状況が一時的なものなのか、構造的なものなのか、持続性はあるのかを見極める努力が重要です。
  5. パターンへの決めつけを避ける: 「リスクオフだから必ず円高になる」といった過去のパターンに固執せず、現在の市場環境における資金の流れや変化の兆候にも注意を払い、柔軟な思考を持つことが大切です。

リスクオン/リスクオフは市場を読むための便利な概念ですが、それに振り回されるのではなく、あくまで判断材料の一つとして客観的に活用する姿勢が求められます。

まとめ

リスクオン・リスクオフとは: それぞれ、投資家がリスクを取ることに前向きな状態(リスク選好)リスクを避けることに慎重な状態(リスク回避)を示す市場心理や状況を意味します。

各局面での状況と資産の動き: リスクオンでは株式・新興国資産・コモディティなどが買われやすく、リスクオフでは国債・金・円・スイスフランなどの安全資産へ資金が逃避する傾向があります。

切り替わる要因: 経済指標、金融政策、企業業績、地政学リスク、政治イベント、市場ショックなどがきっかけとなります。現在のトランプ関税への懸念などもリスクオフ要因となり得ます。

日本市場への影響: 伝統的にはリスクオフ局面で「円高・株安」リスクオン局面で「円安・株高」となりやすい傾向がありましたが、近年は変化も見られます

投資家の対応: 市場のムードを把握しつつも最も重要なのは市場の雰囲気に流されず、冷静さを保ち、長期的な視点と分散投資を基本とすることです。なぜそのムードになっているのか、背景要因を分析することが求められます。

リスクオンリスクオフという概念は、市場のセンチメントを理解し、相場の大きな流れを読む上で非常に役立ちます。しかし、それは常に変化し、時に非合理的な動きも見せます。この市場の「空気」を感じ取りつつも、それに振り回されることなく、ご自身の投資戦略とリスク管理に基づいて行動することが、投資で成功するための鍵となるでしょう。

 

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