リセッションとは?意味・株価への影響・日本の状況を解説【トランプ関税リスクも】

リセッション

リセッションとは?意味・株価への影響・日本の状況を解説【トランプ関税リスクも】

ニュースや経済レポートで

「リセッション懸念」

「世界経済がリセッション入りする可能性」

といった言葉を見聞きすることが増えていませんか? 「リセッション」とは、なんとなく「不景気」のような意味だと理解していても、具体的にどのような状態を指すのか、日本や私たちの生活、そして株価にどのような影響があるのか、正確に知りたいと思っている方も多いでしょう。

特に、2025年4月現在、世界経済はインフレの動向、高金利の影響、地政学的な緊張、そして再任したトランプ米大統領の政策(特にトランプ関税)の不透明感など、様々なリスク要因を抱えており、リセッションへの警戒感が燻っています。

この記事では、「リセッション」とは何か、その基本的な意味や定義、リセッション期には具体的にどのような状況になるのか、米国リセッションが日本経済や株価に与える影響、そして現在のトランプ関税リスクとの関連まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

リセッションとは?用語を徹底解説

リセッションの基本的な意味と定義

リセッション(Recession)」とは、

景気循環における「景気後退」局面

のこと。また、

経済活動が広範囲にわたって著しく落ち込み、その状態が数ヶ月以上にわたって持続すること

を指します。好景気と不景気が繰り返される景気サイクルの「谷」に向かう下降局面がリセッションです。

一般的な定義


ニュースなどでよく用いられる簡易的な定義として、「実質GDP(国内総生産)成長率が2四半期連続でマイナス成長となること」があります。これは客観的で分かりやすい基準ですが、あくまで目安の一つであり、正式な定義ではありません。

米国における正式な定義 (NBER)


アメリカでは、景気循環の判定を行う権威ある組織として全米経済研究所(NBER:National Bureau of Economic Research)が存在します。NBERはリセッションを、

「経済活動全般(生産、雇用、実質所得、卸売・小売売上高など)における有意な落ち込みが経済全体に広がり、数ヶ月以上続く状態」

と、より総合的な指標に基づいて判定しています。GDPだけでなく、雇用や所得、消費、生産といった幅広い経済活動の動向を考慮するため、GDPが2四半期連続でマイナスにならなくてもリセッションと認定されることもありますし、その逆もあり得ます。重要なのは、NBERによる正式な判定は、景気の後退が明確になってから事後的に行われるという点です。

日本における定義


日本では、米国NBERのような特定の機関がリセッションを正式に定義・宣言するわけではありませんが、一般的に

内閣府が発表する「景気動向指数(CI)」などを用いて景気局面の判断

が行われます。景気動向指数(特にCI一致指数)の動きから、景気の「山」(ピーク)と「谷」(ボトム)の時期(これを「景気基準日付」といいます)を、専門家による検討会議を経て事後的に認定します。景気の山から谷までの期間が「景気後退局面(リセッション)」に相当します。こちらもGDPの機械的な基準ではなく、複数の経済指標を基にした総合的な判断となります。

デプレッション(恐慌)との違い
リセッションよりもさらに深刻で、長期間にわたる景気後退を「デプレッション(Depression)」または「恐慌」と呼びます。明確な定義はありませんが、GDPの大幅な落ち込みや大量の失業が長期化するような状況を指し、代表的な例としては1930年代の世界大恐慌が挙げられます。リセッションは景気循環の一部として比較的頻繁に起こりうるのに対し、デプレッションは稀な現象です。

なぜリセッションが起こるのか?(主な要因)

リセッションは、景気循環の自然なプロセスの一部とも言えますが、多くの場合、以下のような様々な要因が複雑に絡み合って引き起こされます。

  1. 金融引き締め: インフレーション(物価上昇)を抑制するために、中央銀行が政策金利を急速に引き上げる(金融引き締め)と、企業の借入コストが増加して設備投資が手控えられたり、住宅ローン金利の上昇などで個人消費が冷え込んだりして、景気を後退させる主な要因となります。
  2. バブルの崩壊: 株式市場や不動産市場などで、実態価値からかけ離れた資産価格の高騰(バブル)が発生し、それが何らかのきっかけで崩壊すると、資産価値の急落(逆資産効果)による消費の冷え込みや、金融機関の不良債権問題などを通じて、深刻なリセッションを引き起こすことがあります。(例:日本のバブル崩壊、米国のサブプライムローン問題)
  3. 金融危機: 大手金融機関の破綻や、金融システム全体への信用不安が高まると、企業や個人がお金を借りにくくなる「信用収縮」が発生し、経済活動全体が麻痺状態に陥ることがあります。(例:2008年のリーマンショック)
  4. 外部からのショック:
    • 供給ショック: 石油価格の急騰(オイルショック)や、パンデミックによるサプライチェーン(供給網)の寸断(コロナショック)など、生産活動に不可欠なモノやサービスの供給が滞ることで、生産コストの上昇(インフレ)と生産量の減少(景気後退)が同時に起こる(スタグフレーション)場合があります。
    • 需要ショック: 大規模な自然災害やテロ事件、紛争の勃発などが、人々の消費・投資マインドを急速に冷え込ませ、需要を急減させることもあります。
  5. 財政政策の失敗: 政府による過度な緊縮財政が景気を冷え込ませることもあれば、逆に持続不可能な財政赤字の拡大が将来的な財政不安や金利上昇を招き、リセッションの要因となることもあります。
  6. 貿易摩擦・保護主義の台頭: 関税の引き上げ合戦などの貿易摩擦が激化すると、世界貿易が縮小し、企業の輸出入活動やグローバルなサプライチェーンに悪影響を与え、企業マインドを悪化させて景気を後退させるリスクがあります。これは現在のトランプ関税に対する懸念にもつながります。

これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用することで、経済はリセッションへと向かうことがあります。

リセッションとはどういう状況なの?

では、経済がリセッションに陥ると、具体的にどのような状況になるのでしょうか? 経済指標の変化と、私たちの生活への影響という二つの側面から見ていきます。

経済指標に現れるリセッションの兆候

リセッション期には、多くの経済指標が悪化する傾向が見られます。

  • GDP成長率の鈍化・マイナス成長: 国全体の経済活動の規模を示す実質GDPが伸び悩んだり、前期比でマイナスになったりします。これが2四半期続くと、テクニカル・リセッションと見なされます。
  • 失業率の上昇: 企業の業績悪化や生産縮小に伴い、人員削減(リストラ)や採用の抑制が進み、失業者が増加します。求人倍率も低下します。
  • 個人消費の低迷: 雇用の不安定化や所得の減少、将来への不安などから、人々が財布の紐を締め、消費を控えるようになります。特に、自動車や家電、住宅といった高額な耐久消費財の売上が落ち込む傾向があります。
  • 企業投資(設備投資・在庫投資)の減少: 景気の先行き不透明感から、企業は工場や機械への投資(設備投資)を手控えるようになります。また、売れ行き不振から在庫が積み上がり、それを減らすための生産調整(在庫投資の減少)も行われます。
  • 企業倒産件数の増加: 売上減少や資金繰りの悪化により、経営が立ち行かなくなる企業が増加します。
  • 鉱工業生産指数の低下: 製造業の活動状況を示す鉱工業生産指数が低下し、工場の稼働率なども下がります。
  • 株価の下落: 将来の企業業績悪化や経済全体への不安を織り込み、株価は下落トレンドとなることが一般的です。リセッション入りする前から株価が下がり始めることも多く、「株価は景気の先行指標」と言われる所以です。(詳細は後述)
  • 金利の低下(傾向): 景気悪化に対応するため、中央銀行が金融緩和(利下げなど)に動くことが多くなります。また、リスク回避のために安全資産とされる国債が買われ、長期金利が低下する傾向も見られます。ただし、スタグフレーション(不況下のインフレ)のような状況では、インフレ抑制のために金利が上昇するケースもあります。

これらの指標が悪化のサインを示し始めると、リセッション入りの可能性が意識されます。

私たちの生活への影響

リセッションは、マクロ経済の指標だけでなく、私たちの日常生活にも様々な形で影響を及ぼします。

  • 雇用の不安定化と収入減: 失業のリスクが高まり、再就職も困難になります。非正規雇用の場合は契約更新がされにくくなる(雇止め)可能性もあります。正社員であっても、賃金の伸び悩みや減少、ボーナスカット、残業時間の削減による収入減などが起こり得ます。
  • 消費の抑制: 収入減や将来不安から、節約志向が強まり、外食や旅行、娯楽などの支出を控えたり、高額な商品の購入を見送ったり(=不景気の再生産)するようになります。
  • 資産価値の下落: 株価や不動産価格が下落し、保有している資産の価値が目減りしてしまう可能性があります。特に退職金や老後資金を株式などで運用している場合、影響は大きくなります。
  • 企業の倒産・事業縮小の影響: 勤務先の経営が悪化したり、倒産したりするリスクがあります。また、取引先企業の倒産、近所の飲食店の閉店、利用していたサービスの停止など、間接的な影響も現れます。
  • 精神的な不安: 経済的な困難や将来への不透明感から、精神的なストレスや不安を感じやすくなります。

このように、リセッションは経済全体だけでなく、個人の生活にも暗い影を落とす深刻な事態と言えます。

リセッションの期間と深刻度

リセッションの期間(景気の山から谷まで)や、その深刻度(GDPの落ち込み幅や失業率の上昇幅など)は、毎回異なります。原因となった要因の種類や大きさ、経済の構造、そして政府や中央銀行による政策対応のタイミングや適切さなどによって、比較的軽微で短期間で回復する場合もあれば、リーマンショック後のように深刻で回復に時間がかかる場合もあります。

アメリカがリセッションしたら日本への影響は?

世界経済において圧倒的な存在感を持つアメリカ合衆国。そのアメリカ経済がリセッションに陥った場合、日本にはどのような影響が及ぶのでしょうか?

なぜアメリカのリセッションが日本に影響するのか?

アメリカ経済の動向は、日本経済と極めて密接に連動しています。その主な理由は以下の通りです。

  • 世界経済における米国の巨大な存在感: アメリカは依然として世界最大の経済大国であり、そのGDPは世界全体の約4分の1を占めています。アメリカの景気動向は、世界の貿易量や資源価格、金融市場などを通じて、世界経済全体に波及効果をもたらします。
  • 貿易・直接投資を通じた強い結びつき: 日本にとってアメリカは最大の輸出相手国の一つであり、自動車、電子部品、機械など多くの製品を輸出しています。また、多くの日本企業がアメリカに生産拠点や販売網を持ち、直接投資を行っています。アメリカ経済が悪化すれば、日本の輸出や海外子会社の収益が直接的な打撃を受けます。
  • 金融市場のグローバルな連動性: 世界の金融市場は密接に繋がっており、特に米国の金融市場(ウォール街)の動向は世界の投資家のセンチメントを左右します。米国の株価下落や金利変動、ドル相場の動きは、為替レートや海外投資家の資金フローなどを通じて、即座に日本の株式市場や債券市場に影響を与えます。

このように、貿易、企業活動、金融市場という複数の経路を通じて、アメリカのリセッションは日本経済に大きな影響を与える構造になっているのです。

日本経済への具体的な影響

アメリカがリセッション入りした場合、日本経済には以下のような具体的な影響が現れると考えられます。

  1. 輸出の大幅な減少: 米国の個人消費や企業の設備投資が落ち込むため、日本から米国への輸出、特に自動車や資本財(機械など)、電子部品などが大幅に減少します。これは輸出依存度の高い日本経済にとって大きな打撃となります。
  2. 企業収益の悪化と国内投資・雇用の抑制: 輸出減少や、米国で事業展開する日本企業の現地での売上・利益の悪化は、日本企業の連結業績を押し下げます。業績悪化を受けて、企業は国内での設備投資や研究開発投資を手控えるようになり、賃上げにも慎重になり、新規採用の抑制やリストラにつながる可能性もあります。
  3. 株価の下落: 米国株価(NYダウやS&P500など)がリセッション懸念や実際の景気悪化で下落すると、日本の株式市場も連れ安となることがほとんどです。これは、①投資家心理の悪化(リスクオフ)、②海外投資家(特に米国系ファンドなど)による日本株売り、③米国景気悪化による日本企業の業績懸念、などが複合的に作用するためです。日経平均株価やTOPIXも大きく下落する可能性があります。
  4. 円高圧力の発生: 世界経済全体への不安が高まると、投資家はリスクの高い資産から比較的安全とされる資産へ資金を退避させる動き(リスクオフ)を強めます。円は伝統的に「安全資産」の一つと見なされる傾向があるため、有事の際には円が買われやすく、円高ドル安が進行する可能性があります。円高は、輸出企業の採算をさらに悪化させる要因となります。
  5. 国内景況感の悪化と消費への影響: アメリカ経済の悪化や株価の下落は、日本の企業経営者や消費者のマインド(景況感)を冷え込ませます。将来への不安から、企業は投資に、家計は消費にさらに慎重になり、日本国内の経済活動全体を停滞させる可能性があります。

このように、アメリカのリセッションは、

輸出、企業業績、株価、為替、景況感といった様々な経路を通じて、日本経済に深刻なマイナスの影響

を及ぼす可能性が高いのです。

現在(2025年4月)の状況とトランプ関税の影響

2025年4月現在、世界経済は依然として複雑な状況にあります。インフレ圧力は一部で根強いものの、これまでの金融引き締めの効果が徐々に現れ、経済成長の鈍化を示す指標も見られています。一方で、労働市場は比較的底堅さを保っている国もあります。

このような中で、リセッション入りのリスクは依然として燻っています。特に懸念されているのが、再任したトランプ米大統領が打ち出す可能性のある通商政策、すなわち「トランプ関税」の影響です。

前回の記事でも触れたように、トランプ政権(第2期)が、公約通り全ての輸入品に一律関税を課したり、特定の国(特に中国)に対して高関税を発動したりした場合、以下のような経路でリセッションリスクが高まると考えられます。

  • インフレ再燃と金融引き締め長期化: 関税は輸入物価を押し上げ、インフレ圧力を再燃させる可能性があります。そうなれば、FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げに踏み切りにくくなり、高金利状態が長期化し、景気をさらに下押しするリスクがあります。
  • 世界貿易の縮小: 関税合戦は世界貿易を停滞させ、グローバルなサプライチェーンを混乱させ、企業の生産活動や投資意欲を減退させます。
  • 企業・消費者マインドの悪化: 将来への不確実性が高まることで、企業は投資や雇用に慎重になり、消費者は支出を控えるようになり、経済全体が縮小均衡に向かう可能性があります。

もし、トランプ関税が世界経済をリセッションに陥れるような事態となれば、

日本への影響は、前述した通常の米国リセッションの影響に加えて、さらに深刻なものとなる可能性

があります。輸出への打撃、コスト上昇、サプライチェーンの混乱などが複合的に発生し、日本経済が長期にわたって低迷するリスクも考えられます。今後のトランプ政権の政策動向と、それが世界経済および日本経済に与える影響を注意深く見ていく必要があります。

まとめ

リセッションとは: 景気循環における「景気後退」局面であり、経済活動が広範囲に著しく落ち込み、数ヶ月以上持続する状態です。GDPが2四半期連続マイナスというのは一般的な目安に過ぎません。

リセッションの状況: GDP減少、失業率上昇、個人消費や企業投資の低迷、企業倒産増加など多くの経済指標が悪化し、生活にも雇用の不安定化や所得減、資産価値下落などの影響が出ます。

米国リセッションの日本への影響: 貿易、企業活動、金融市場での強い結びつきから、米国のリセッションは日本の輸出、企業収益、株価、為替などに深刻なマイナス影響を与える可能性が高いです。

現状とトランプ関税リスク: 2025年4月現在もリセッション懸念は燻っており、特に「トランプ関税」が発動されれば、インフレ再燃や貿易縮小を通じてリセッションリスクを高め、日本経済への影響もより深刻化する可能性があります。

投資家としての心構え: リセッションは経済サイクルの一部ですが、その兆候や株価への影響を理解し、リスク管理(分散投資、長期視点)を行うことが重要です。

リセッションという言葉を聞くと不安になるかもしれませんが、その意味やメカニズム、影響を正しく理解しておくことで、過度に恐れることなく、むしろ冷静な投資判断や将来への備えに繋げることができます。経済ニュースや指標を読み解く上で、「リセッション」は常に意識しておきたい重要なキーワードと言えるでしょう。

 

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