【用語解説】バリュー株とは?意味・探し方・投資法をわかりやすく解説!グロース株との違いも

バリュー株

バリュー株とは?わかりやすく解説!グロース株との違いも

バリュー株

株式投資の世界では、「バリュー株」という言葉をよく耳にします。「バリュー株とは、なんだかお得な株らしいけど、具体的にどういう意味なの?」「どうやって探せばいいの?」「有名なウォーレン・バフェットさんもバリュー株投資をしているって本当?」など、気になっている方も多いのではないでしょうか。

バリュー株、別名「割安株」への投資は、株式投資の王道とも言えるスタイルの一つです。しかし、その意味や特徴、投資手法、そして対比される「グロース株」との違いを正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、「バリュー株」とは何か、その基本的な意味から、具体的な探し方(指標の見方)、バリュー株投資のメリット・デメリット、そしてグロース株との比較まで、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。この記事を通じて、「バリュー株」への理解を深め、ご自身の投資スタイルを考える上での参考にしてください。

バリュー株とは?株の基本用語

バリュー株の基本的な意味 ~割安に放置された株~

バリュー株とは、その名の通り「価値(Value)」のある株、すなわち、

企業が本来持っている価値(企業価値や保有資産、収益力など)と比較して、現在の株価が相対的に低い(割安な)状態にあると評価される株式

のことを指します。「割安株」とも呼ばれ、こちらの名称の方がイメージしやすいかもしれません。

なぜ、企業の価値に対して株価が割安な状態で放置されることがあるのでしょうか? それには様々な理由が考えられます。

  • 市場全体の地合い悪化: 景気後退懸念などで株式市場全体が下落している局面では、優良企業の株まで一緒に売られてしまい、本来の価値よりも安くなることがあります。
  • 一時的な業績不振: 何らかの理由で一時的に業績が悪化しているものの、事業基盤はしっかりしており、将来的に回復が見込める企業の株価が、過度に売り込まれている場合があります。
  • 業界への悲観的な見方: その企業が属する業界全体に対して、将来性が疑問視されていたり、ネガティブなニュースが流れたりして、業界全体の株価が低迷していることがあります。
  • 投資家からの注目度が低い: 知名度が低い、事業内容が地味、あるいは単に市場のテーマに乗っていないなどの理由で、投資家からの関心が薄く、本来の価値が株価に反映されていない企業もあります。

バリュー株投資とは、このように何らかの理由で市場から一時的に過小評価され、割安になっている株式を見つけ出し、将来その価値が見直されて株価が上昇することを期待する投資手法なのです。

バリュー株の特徴

一般的に、バリュー株には以下のような特徴が見られる傾向があります(ただし、全てのバリュー株に当てはまるわけではありません)。

  • 安定した事業基盤を持つ企業が多い: 比較的新興企業よりも、歴史があり、成熟した産業に属している企業が多い傾向があります。事業内容が景気変動の影響を受けにくく、安定した収益やキャッシュフローを生み出しているケースが見られます。
  • 株価指標(バリュエーション指標)が低い: 後述するPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった、株価の割安度を示す指標が、市場平均や同業他社と比較して低い水準にあることが多いです。
  • 株価の変動が比較的穏やか(とされることも): 将来の急成長への期待で買われるグロース株と比較すると、株価の変動(ボラティリティ)が相対的に小さい傾向があるとも言われます。ただし、割安には割安なりの理由がある場合も多く、業績悪化などでさらに株価が下落するリスクもあり、一概には言えません。
  • 配当利回りが高い傾向がある: 株価が企業価値に対して割安であるため、企業が配当を出している場合、株価に対する配当金の割合(配当利回り)が相対的に高くなる傾向があります。これにより、株価上昇(キャピタルゲイン)だけでなく、配当金(インカムゲイン)も期待できる場合があります。

バリュー株投資の父「ベンジャミン・グレアム」

バリュー株投資の考え方を体系化し、「バリュー投資の父」と呼ばれているのが、ベンジャミン・グレアム(1894-1976)です。彼は、世界で最も成功した投資家の一人であるウォーレン・バフェットの師としても知られています。グレアムは、著書『賢明なる投資家』や『証券分析』の中で、企業の財務諸表を徹底的に分析し、本質的な価値よりも著しく低い価格で取引されている株式(ネットネット株など)に投資することの重要性を説きました。彼の投資哲学は、今日のバリュー株投資の基礎となっています。

投資の世界でのバリュー株の具体的な使い方

では、実際にバリュー株を見つけ出し、投資するにはどうすればよいのでしょうか? ここでは、バリュー株投資の基本的な考え方、銘柄の探し方(指標)、そしてメリット・デメリットを解説します。

バリュー株投資の基本的な考え方

バリュー株投資の根底にあるのは、「株価は長期的には企業の本質的な価値に収束する」という考え方です。この考えに基づき、以下のステップで投資を進めます。

  1. 「市場の評価間違い」を探す: まず、企業の財務状況や収益力、資産価値などを分析し、その企業が本来持っている価値(内在価値)を見積もります。そして、現在の株価がその内在価値に対して十分に低い、「割安に放置されている」と考えられる銘柄を探し出します。市場のノイズや一時的な感情に惑わされず、客観的な分析に基づいて割安度を判断することが重要です。
  2. 本来の価値への回帰を待つ: 割安だと判断した銘柄に投資した後は、市場がその企業の真の価値に気づき、株価が適正な水準まで上昇(修正)されるのをじっくりと待ちます。このプロセスには数ヶ月から数年、あるいはそれ以上の時間がかかることもあります。そのため、バリュー株投資は基本的に長期的な視点と忍耐力が求められる投資スタイルです。
  3. 安全域を確保する: これはベンジャミン・グレアムが特に重視した概念です。将来の予測には不確実性が伴うため、企業の内在価値よりも大幅に低い価格で株式を購入することで、万が一、業績が悪化したり市場環境が変わったりした場合でも、損失を最小限に抑えるための「安全マージン」を確保しようという考え方です。

バリュー株の見つけ方・探し方(代表的な指標)

企業が割安かどうかを判断するために、いくつかの株価指標(バリュエーション指標)が用いられます。ただし、単一の指標だけで判断するのは危険であり、複数の指標や企業の定性的な側面(ビジネスモデル、競争力、経営陣など)を総合的に評価することが重要です。

  • PER (株価収益率 / Price Earnings Ratio):
    • 計算式: `株価 ÷ 1株当たり当期純利益(EPS)`
    • 意味: 株価が1株当たりの利益の何倍まで買われているかを示します。数値が低いほど、利益に対して株価が割安であると評価されます。
    • 目安: 市場平均や同業他社のPERと比較して判断します。一般的に、成長期待が高い企業はPERが高くなる傾向があります。日経平均株価の平均PERは通常15倍前後で推移することが多いですが、業種によって大きく異なります。
  • PBR (株価純資産倍率 / Price Book-value Ratio):
    • 計算式: `株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)`
    • 意味: 株価が1株当たりの純資産(企業の解散価値に近いもの)の何倍まで買われているかを示します。数値が低いほど、企業の資産価値に対して株価が割安であると評価されます。
    • 目安: 一般的にPBRが1倍を下回ると、株価が解散価値よりも安い状態とされ、割安感の目安として注目されます。ただし、収益性が低い、あるいは将来性が懸念される企業のPBRは低くなる傾向があります。
  • 配当利回り:
    • 計算式: `1株当たり年間配当金 ÷ 株価 × 100 (%)`
    • 意味: 株価に対する年間配当金の割合を示します。数値が高いほど、投資額に対して多くの配当収入が得られることを意味し、株価の割安さを示す間接的な指標ともなり得ます。
    • 目安: 市場全体の平均配当利回りや、同業他社と比較します。ただし、配当利回りが高くても、業績悪化で減配されるリスクもあります。
  • ミックス係数:
    • 計算式: `PER × PBR`
    • 意味: 企業の収益面(PER)と資産面(PBR)の両方から割安度を測ろうとする指標です。数値が低いほど割安であると評価されます。グレアムは、この係数が22.5倍以下であることを一つの目安としていました。
  • その他の指標:
    • PCFR(株価キャッシュフロー倍率): 株価が1株当たりキャッシュフローの何倍か。キャッシュフローは利益よりも操作されにくいとされるため、重視する投資家もいます。
    • EV/EBITDA倍率: 企業の事業価値(EV)が、税引前利払前償却前利益(EBITDA)の何倍かを示す指標。M&Aなどの際に企業価値評価で用いられることがあります。

これらの指標は、証券会社のウェブサイトや取引ツール、株式情報サイトなどで確認できます。多くの証券会社では、これらの指標を用いて銘柄を絞り込む「スクリーニング」機能を提供しており、バリュー株を探す際に活用できます。

バリュー株投資のメリット

バリュー株投資には、以下のようなメリットがあると考えられています。

  • 下値リスクが比較的低い可能性: すでに株価が企業価値に対して割安な水準にあるため、市場全体が下落する局面でも、グロース株などに比べて下落幅が小さく済む可能性があります(安全域の考え方)。ただし、割安には理由がある場合も多く、必ずしも下落しないわけではありません。
  • 長期的に安定したリターンが期待できる可能性: 市場が企業の真の価値に気づけば、株価が大きく上昇する可能性を秘めています。また、比較的高配当な銘柄も多いため、配当収入(インカムゲイン)による安定した収益も期待できる場合があります。
  • 精神的な安定につながる可能性: 株価の変動がグロース株と比較して穏やかである傾向があれば、日々の値動きに一喜一憂することなく、精神的に落ち着いて長期保有しやすいという側面もあるかもしれません。

バリュー株投資のデメリット・注意点

一方で、バリュー株投資には以下のようなデメリットや注意点も存在します。

  • 「バリュートラップ」に陥るリスク: 最も注意すべき点です。株価指標上は割安に見えても、実際には業績が悪化し続けていたり、事業自体が構造的な問題を抱えていたりして、株価が永遠に上昇しない「万年割安株」である可能性があります。これが「バリュートラップ」です。なぜ割安なのか、その理由を徹底的に分析することが不可欠です。
  • 成果が出るまで時間がかかる: 市場が割安さに気づき、株価が上昇するまでに非常に長い時間がかかることがあります。数年単位での保有を覚悟する必要があり、短期的なリターンを求める投資家には向きません。忍耐力が試される投資法です。
  • 市場のトレンドから取り残される可能性: ハイテク株などのグロース株が市場全体を牽引するような「グロース相場」では、バリュー株のパフォーマンスは相対的に見劣りすることがあります。市場のテーマやトレンドに乗れない時期があることを理解しておく必要があります。
  • 指標だけに頼る危険性: PERやPBRなどの指標が低いというだけで投資を決定するのは危険です。その背景にある企業の質(ビジネスモデルの強さ、経営陣の能力、財務の健全性、将来の成長性など)を、定量・定性の両面からしっかりと評価する必要があります。

バリュー株投資は、地道な企業分析と長期的な視点、そして市場のノイズに惑わされない強い精神力が求められる投資スタイルと言えるでしょう。

バリュー株とグロース株? 結局どっちがいいの?

投資の世界では、バリュー株としばしば対比される存在として「グロース株」があります。両者の違いを理解することは、自身の投資スタイルを考える上で役立ちます。

グロース株とは? ~成長性が期待される株~

グロース株とは、その名の通り「成長(Growth)」が期待される株、すなわち、現在は必ずしも割安とは言えない(むしろ割高に見えることもある)が、将来的に高い売上高や利益の成長が見込まれる企業の株式のことです。「成長株」とも呼ばれます。

グロース株の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • 高い成長性: 売上高や利益が年々高い率で伸びている、あるいは将来的に急成長すると期待されている。
  • 革新性: 新しい技術、画期的な製品・サービス、独自のビジネスモデルなどを持ち、市場を牽引したり、新たな市場を創造したりする可能性がある。
  • 株価指標は割高な傾向: 将来への高い期待が株価に織り込まれているため、PERやPBRといった指標は市場平均やバリュー株と比較して高くなる傾向がある。
  • 株価変動が大きい傾向: 成長期待が実現すれば株価は大きく上昇する可能性がある一方、期待が剥落したり、業績の伸びが鈍化したりすると、株価は急落するリスクもある。ボラティリティが高い傾向。
  • 配当は少ないか無配が多い: 利益を株主還元(配当)に回すよりも、さらなる成長のための事業投資(研究開発、設備投資、M&Aなど)に優先的に充当する企業が多い。
  • 代表的な業種: IT(情報技術)、バイオテクノロジー、半導体、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー関連などの新興企業や成長分野に多い。

バリュー株 vs グロース株:特徴の比較

両者の特徴を比較すると、以下のようになります。

主な評価軸
バリュー株: 現在の価値との比較 (割安度) / グロース株: 将来の成長性への期待
株価指標
バリュー株: PER, PBRなどが低い傾向 / グロース株: PER, PBRなどが高い傾向
成長性
バリュー株: 相対的に低い or 安定 / グロース株: 高い成長が期待される
株価変動
バリュー株: 比較的穏やか? (銘柄による) / グロース株: 大きい傾向
配当
バリュー株: ある場合が多い? (銘柄による) / グロース株: 少ない or 無配の場合が多い
投資スタイル
バリュー株: 長期・忍耐・価値回帰期待 / グロース株: 成長期待・株価上昇狙い

どちらが良いかは一概に言えない(重要)

では、バリュー株とグロース株、結局どちらに投資するのが良いのでしょうか? これは一概に結論を出せる問題ではありません。どちらのスタイルにもメリット・デメリットがあり、どちらが優位になるかは様々な要因によって左右されます。

  • 市場環境によるパフォーマンスの違い: 歴史的に見ると、バリュー株が市場平均を上回るパフォーマンスを示す時期(バリュー相場)と、グロース株が優位になる時期(グロース相場)が交互に訪れる傾向があります。例えば、景気回復初期や金利上昇局面ではバリュー株が、低金利環境や技術革新が進む局面ではグロース株が選好されやすい、といった傾向が見られることもあります。
  • 投資家のリスク許容度や投資目標による: 比較的安定したリターンを求め、長期的な視点でじっくり取り組みたい投資家にはバリュー株が向いているかもしれません。一方、多少のリスクを取ってでも高いリターンを狙いたい、成長ストーリーに魅力を感じる投資家にはグロース株が魅力的に映るでしょう。
  • 分散投資の考え方: バリュー株とグロース株は異なる値動きをすることが多いため、両方のタイプの銘柄をバランス良くポートフォリオに組み入れることで、市場環境の変化に対応しやすくし、リスクを分散させるという考え方(「コア・サテライト戦略」など)も有効です。
  • 重要なのは自分に合ったスタイル: 最終的には、どちらか一方のスタイルが絶対的に正しいということはありません。最も重要なのは、ご自身の投資哲学、目標、期間、リスク許容度などを十分に考慮し、自分に合った投資スタイルを見つけ、それを継続することです。バリュー株とグロース株の特性を理解した上で、自分なりの基準で銘柄を選んでいくことが大切になります。

まとめ

今回は、「バリュー株(割安株)」について、その基本的な意味本来価値より割安な株)とその特徴を再確認しました。

バリュー株投資の考え方割安で買い、価値回帰を待つ、代表的な指標(PER, PBRなど)、メリット・デメリットを要約しました。

グロース株との違いを明確にし、どちらが良いかは市場環境や投資家自身のスタイルによると説明しました。

バリュー株投資は魅力的な選択肢ですが、「バリュートラップ」などのリスクも存在するため、指標だけでなく企業の本質的な価値を見極める分析が重要であることを強調しました。

長期的な視点と忍耐が求められる投資法であることを示唆しました。

バリュー株投資は、ベンジャミン・グレアムやウォーレン・バフェットといった著名な投資家にも実践されてきた、歴史ある王道の投資スタイルの一つです。市場の一時的な評価に惑わされず、企業の本質的な価値を見抜く力と、長期的な視点、そして忍耐力が求められます。

指標だけで判断するのではなく、なぜその株が割安なのか、その理由は将来解消されるものなのかを深く分析することが、バリュー株投資で成功するための鍵となります。この記事が、あなたの投資スタイルを見つける一助となれば幸いです。

 

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